今回は燻製小屋の写真付きの紹介とベーコンづくりについて書きたいと思います。
燻製小屋が完成してから数か月が経ちました。
すでにこの燻製小屋を使って何度も燻製をしており、使い方のクセなどもわかってきて問題なく実用出来るレベルになっています。
まずは燻製小屋の紹介。
まずは全体の様子。
扉が3つに分かれてついています。この意図としては燻製作業中の手入れのためです。
できるだけ熱や煙を逃さずに、個別に開閉して、ウッドチップを入れたりできます。
あと、すべての扉には南京錠。
食材が中にあるときに、人に開閉されては困りますので常に必ず鍵を閉めています。
全部の扉を開けるとこちら。
上の方から説明をしていくと、
大きな食材を吊り下げるフック用ステンレスポールと、食品を置くための棚2段。
棚板は今は下段に1枚しか入れてない。
吊り下げフックを使うと長さ1mほどの食材を燻製出来る。鮭とか丸ごと燻製に出来てしまう。けど、まだ使ったことはない。
棚はスチールラックの棚板をそのまま使用。網の間隔が程よいので設計当初からこれを使うつもりでいました。
この棚板を使うために内寸を考えたまである。
ちなみに安いヤツでステンレスではなくクロムメッキ。特に安全性には問題ありません。
中段には油受け。
燻製卵くらいだと油受けは不要ですけど、ベーコン等の脂の多い食材は温度が上がると脂が落ちますので必須です。
油受けの下には熱源があるので脂が熱源に落ちると火災の恐れもありますから。
また、熱源の真上に設置するのでしっかり金属製でなくてはいけない。ダイソーで300円くらいで買ったステンレストレイを利用。
棚受けにはステンレスポール。トレイがズレず落ずぴったり幅でポールを2本渡し置くだけ。
下段には熱源。
熱源は600Wの電熱線コンロ2台。合計1200W。
右の年季が入ってるのが長年使っているやつ。左の新しいのがこの燻製器のために追加購入したやつ。
一方のコンロにはステンレス皿を置き、この中でウッドチップを燃焼させて煙を上げます。
ステンレス皿はドックフードのボウル。丈夫でサイズも選べて手頃なお値段で以前からずっと使ってる。
真ん中の耐火レンガは、特に耐火レンガである意味はないけど、燻製開始前に小屋を予熱するためにカセットガスコンロを置くための台。
カセットガスで直火を使った余熱は正直怖いですけど、電気コンロでは予熱に時間がかかりすぎてしまうので、この規模の燻製小屋では必須かと思います。
温度が上がりすぎるとカセットガスが爆発する可能性もあるので、使っている間はしっかり見守り。あと密閉度が高いと酸欠で炎が消えるのでこれも注意です。
予熱が終わるとカセットガスコンロは取り出し、電気コンロにお任せになります。
燻製を実際にやっている最中は、中段上段の扉はほとんど開けません。
下段だけ開けてウッドチップを追加するだけです。
熱源を自動でコントロールするためのサーモスタット。
サーモスタットの制御先は小屋の中に設置したコンセント。
熱源の写真の右奥に見えているコンセントですね。
このあたりは電気工作(というほどのものではないけど。)は自作です。
小屋の中の高い位置に温度センサーを刺してあって
設定上限温度になると、小屋の中のコンセントの電源が落ち、
設定下限温度になると、電源が入ります。
門に設置されている電気工事士さんの施工によるコンセントから電気を取っていて、その先をいじくってるだけなので法的にはOK。
さらに安全のため門のコンセント自体が普段通電していない。店内のブレーカーを入れる必要があって、燻製小屋を作るとき以外OFFになっている。
さて、サーモスタットを使うようになって温度管理の心配が無くとても便利になりました。
以前の燻製器とは比べ物にならない便利さと安心感です。
以前の燻製器は小さい分、電気コンロ600W1台で十分温度を上げることができましたが、隙間も多くて天候によりかなり温度調整に苦労しました。温度はしっかり上がってるかな?上がりすぎてないかな?温度下がってないかな?常に心配していましたから。
欲を言うと食材の中心温度計も組み込みたいなぁ。
中心温度計がサーモスタットと連動するところまでは求めませんが稼働中にモニターしたいんですよね。
実体験として、燻製器内の設定温度より食材の温度の中心温度の方が高くなるケースがあります。サーモスタットのセッティング等を見直した方が良いのかもしれないけど、
ベーコンの燻製(特に温燻)って煙で燻すことだけが目的じゃなく、低温調理による滅菌も同時並行で行っています。(製法によって異なると思いますので異論は認めます)
温度管理が重要ですから、食材に火を通しすぎないためと万が一温度が下がりすぎた場合の安全のために中心温度のモニターを常に監視できたらより安心ですからね。
まあ、そこまで行くとスチームコンベクションオーブンの機能です。
業務用だったら百万近い機械並みの機能も、DIYしてしまいたくなるのがDIY志向の良いところ(悪いところ?)。
そのうちWifi温度計とか使ってシステム化するかもしれません。
システム化というと、自動でウッドチップを追加するシステムが欲しい!いろいろ考えているんだけどうまくいきそうな気がしない。
猫のごはんが時限式で自動で出てくる機械みたいなイメージ。。
何か思いついたら機能追加するつもり。
さて、燻製小屋の話はこのくらいにして
今回はベーコンづくりの様子を少しご紹介したいなと。
ほぼうちのベーコンづくりのレシピのようなものです。
まずは塩漬けです。
一度に仕込む輸入豚バラ半身約4㎏分。
肉と脂のバランスで、あえて特定の産地の輸入豚を選んでます。
ソミュール液を1リットル、塩は岩塩250g。砂糖は120g。
ニンニク胡椒ローリエ他、比較的シンプルなハーブを煮込む。で、冷やしておく。
ジップ保存袋に豚バラ肉を詰め込み、煮込んでから冷やしたソミュール液をたっぷり注ぐ。
この状態でチルド冷蔵庫で塩漬けに入ります。時々上下入れ替えたりするくらい。
期間は最低1週間、10日くらい漬けたままのこともある。
肉1キロあたり250mlのソミュール液62.5gの塩分。
肉と水合わせて1250gに対する62.5gの塩で、ほぼ約5%の塩分濃度になっていると思います。
塩分濃度5%は菌の繁殖を抑える濃度です。冷蔵なのでそこまで塩分強くなくても・・・とも言えますが、安心のためにもこの塩分濃度を確保しています。
低塩分濃度で塩抜きしないレシピも一度くらい試したいとは思っているが、何となく正統じゃない気がしている。
1週間~10日もするとソミュール液と肉の塩分が均一になる(んじゃないか)と思います。
さて続いて、問題の(?)塩抜き工程です。
何が問題かって、塩抜きはベーコン作ったことある人あるある、一番難しいというか、分かりづらい工程なんじゃないかと思っています。
塩漬けの時点で5%だった塩分濃度を、目標としては2.5%以下くらいの塩分濃度まで下げるイメージでやっていきます。
2.5%ってそのまま食べたらちょっとしょっぱいけど、料理に使うならピリッと来るくらいの塩加減だと思います。
ソミュール液から出した肉を寸胴に乱暴に投げ入れて、お店の営業時間ずっと、6~7時間くらい流水で塩抜き。
水面に落ちた水が跳ねないくらい(菜箸の太さくらい)の流水で。時々上下返したりして上の方だけ塩が薄いようなことが無いように。
よく、塩抜きの際には「ちょっと切り取って味見をして少し味が薄い程度」という判断基準が語られていますが、これに私は異論を唱えたい。
塩抜き前の肉の塩分ってどのくらいで、塩抜き後はどのくらいが目標なの?
ちょっとって、どのくらい切り取るの?5㎜?1㎝?
元のお肉の大きさ(太さ)どんなもんなの?
5cmx5㎝x20㎝のバラ肉と5㎝x10㎝x20㎝のバラ肉と同じ基準で良いのかね?
など、曖昧な基準なわけですよ。
こういうのに異論を唱えるのってうざいヤツだなぁとは思いますが、なんか気になっちゃうんです。
じゃあお前はどうするのかという話になりますよね。
一つの方法は科学的アプローチだと思いますよ。料理は化学。試しに少し考えてみましょう。
・塩抜き前の肉の塩分濃度が5%均一だとします。
・塩抜きで2.5%、または全体の1/2に相当する塩分を流してやれば2.5%になるね!
・5cmx10㎝x20㎝で1㎏の肉だとすると、1000立方㎝に50gの塩が入っているということだ。
・肉の外側9.5㎜分の体積がざっくりと500立方㎝になるから、肉の外側9.5㎜の塩分濃度を0%に出来ればおよそ塩分濃度2.5%と言えそうだね!
・・・あれ?でも流水で塩抜きしていって、外側9.5㎜が全く塩がない状態になったとして、外側15mmの地点の肉は塩分濃度きっちり5%のままな訳ないだろ。それなりに減っているのでは?
・・・そもそも、外側9.5㎜をきっちり0%まで塩抜きってのも無理では?
ああ、もう諦めましょう。
ええ、そうですよ。私だってそんなアプローチでやってるわけじゃありませんよ。
結局何かって、経験則でしかありません。
基本、何度も同じ作り方でやってみて、前回イマイチだったところを調整して、を繰り返して概ね良さそうな手順に落ち着かせるしかない。
前回しょっぱかったからって、塩漬けするときの塩分量ちょっと減らして、塩漬け期間も少し減らして、塩抜きの時間を増やしたら、薄くなっちゃった。
なんてこともあるでしょうね。
ぶっちゃけ未だに私も手順を変えることが多々ありますし、作るたびにちょっと塩気強すぎたり弱すぎたりすることもあります。
塩抜きしているの忘れて抜きすぎちゃったり。
それでも繰り返すうちに目的の味に近づけるよう、諦めずに頑張るんです!
おや?また話題が脱線したのか?いやしてないか。
塩抜きで無駄な語りを入れてしまっただけですね。
話を進めます。
次の工程は肉の乾燥です。
塩抜き後の肉はブヨブヨで気持ち悪い感触です。
この水分を紙で拭き取ります。
キッチンペーパーひと箱使ってやる!くらいな気持ちで、水分が紙に染みなくなるくらい拭きます。
そのうえで、改めて紙に巻いて冷蔵庫で乾燥させます。
塩抜きにより塩分が少なくなって腐敗しやすいはずなので注意が必要です。
私の場合冷蔵庫でファンを回して乾燥を促して、2日くらい乾燥させている。
乾燥後の様子が以下の写真。
普通のお宅では冷蔵庫内でファンを回すとかは難しいので、紙を何度か取り換えるとか、結構お高いけど、脱水シートを使うとばっちり水分は抜けます。
なお、この乾燥の時間で塩抜き作業で塩分濃度が薄くなった外側と、塩分が変わっていない内側との塩分濃度が均一になってくる。(イメージです。実際はわかんない。)
表面にしっとり感が無くなるくらい乾燥したことを確認して、燻製準備が整いました。
最後の工程、燻煙です。
まずは予熱。冷たくなっている肉を一気に中心温度60度まで温めます。
コンベクションオーブンで100度で30分、80度で30分で大体中心温度60度くらいになる。
合わせて燻製小屋も予熱。燻製小屋の温度を60度で安定するまで上げます。
一旦60度になったとしても小屋に熱が吸収されてすぐ下がるので、80度30分とか維持しないと温度が安定しない。この辺がうちの燻製小屋のコツ。
ちなみにおよそ55度を超えると雑菌が繁殖しにくい温度なので60度を目安にしてます。
以前は温度が不安定な燻製器だったから75度目安でやってたんだけど、サーモスタットを入れて温度が安定したので60で十分と判断しています。
そして予熱したお肉を棚に並べる!
あまりに巨大な燻製小屋のため、4㎏程度の肉じゃこんなもんです。
棚板を増やせば20キロくらい余裕で燻製可能です。吊り下げフックを使えばさらに・・・。
で、温度の不安がない状態で、時々ウッドチップを足しながら放置。
本来の低温調理としては2時間あれば十分。
ウッドチップも20分おきに追加して延々煙をあげてやれば2時間もあれば燻製具合も十分ですが、お店の営業時間中にやってるからチップを足せない時間が結構多く、煙の香りを肉に十分まとわせるために、なんだかんだ5時間くらいやってる。
燻製している時間が変わればベーコンに含まれる水分量はいくらか変わって仕上がりも多少違うとは思うけど、事前の乾燥が十分なら時間をかけても短時間でやってもそれほど劇的な変化はないと思う。
いい色になってきてる!完成!!
すぐ切って食べてももちろん美味しい。
保存するためにもう少し小分けにする必要があるけどこのままじゃカットすると肉汁があふれ出す温度。
この時の肉の中心温度は65度。まあ安心の温度です。
このまま1日冷蔵してお肉を締めて、それからカットして保存となります。
以上。ベーコンづくりの様子でした。
実はこの燻製小屋を活用するために、燻製体験ワークショップとか計画しようかと思ってます。
塩漬けを体験してもらって、2週間後くらいに本番の燻製の体験をしてもらう。とかね。
保健所と相談してやり方を熟慮し、冬のお店が暇な時期にでも開催しようかと。
ご興味やご意見等があれば是非ご連絡ください。
いやー久々にがっつりブログ書いた気がする。
今回はここまで。
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