玄関脇に格子を作る

玄関右側を外から見たところです。

この窓の中はトイレで、もとは台所だった所なのですが、出窓のような少し張り出した形になっています。

この窓は、古民家ならではの木製の建具ではなく、昭和終盤のいわゆるアルミサッシの窓です。このアルミサッシの見た目が古民家には異質であり、正直残念です。

写真ではトイレ用の水道配管が屋外露出で通してあるのがわかります。

古民家では壁の中とか床の下とかに新しく配管を作る事は難しいので、何かと露出配管をする事になります。

これも見た目をさらに残念にさせていると思います。


さらに、この窓の下、軒下の地面にはムロがあって深さ1メートルくらい穴があいています。

板で塞いであるものの、誤って落ちてはいけないので、塞ぐ必要があると思っていました。


あとはトイレの窓ということで目隠しも必要と思っていたところでしたので、ここを何とかしないといけないと考えていました。



少し話はずれますが、ムロというのをご存じでしょうか?


ご年配の方ならご存知の方も多いと思いますが、冷蔵庫が無い時代、農作物などを保存するために地下に穴を掘って作った貯蔵庫のことです。

当然電気で冷やすわけではありませんから冷蔵庫のような低温ではありませんが、まあ、温度変化が少ない、いわゆる冷暗所というところになります。

このムロは寒冷地においてはむしろ冬季の方が効果を発揮すると思います。

気温がマイナス10度にもなる地域では、農作物の保存も温度が低すぎて困る事があります。


普通に生鮮野菜の保存を想像してほしいのですが、冷凍庫に入れて凍らせたり、時には室温に戻したりを繰り返したら直ぐに傷んでしまうのは想像に難くないでしょう。

実際に私も経験した事がありました。

冬の初めに収穫した大根を納屋に置いておいたら、春には腐り溶けてしまっていたのです。

しかし、これに懲りてちょっと調べてみたら、土中に埋めておくと良いとの情報を見て、試してみたところ、春に大根おろしを楽しめるほど新鮮なまま保存できました。


雪や氷で閉ざされている畑の土中に埋めずとも、家の周りでこれを実現するのがムロです。

地下に作ったムロに入れておけば、凍結することなく春まで保存出来るわけです。

寒冷地で冬季に凍結を防ぐ手段として大切な倉庫だったんだろうなと思います。



で、話を戻して、

見た目が残念。

ムロは落ちたら危ないので塞ぐ必要がある。

ここはトイレだから多少の目隠しが欲しい。

これらを踏まえ、どんな対応が必要かを考えます。


色々考えを巡らせた結果、和風建築の代表選手である格子を作る事にしました。



・・・ここから更に話がずれていきますがお付き合いください。


元々、格子の役目とは侵入防止、目隠し、および建物の意匠であろうと思っています。

まさに今考えている目的にぴったりな構造物です。

格子を作るにあたっては、ご近所、中山道和田宿の様々な建物の格子を調査しました。

地域の文化を考えて建物のデザインを考える事は重要だと思ったからです。


そもそもを考えると、私がリノベーションしている古民家は農家建築です。

宿場町の旅籠(はたご・つまり宿屋)とか商店の建築とは異なりますから、元々格子による装飾等は施されていません。

でも、これからは飲食店になるわけですから用途として格子を持ち込む事は間違いではないと考えます。ただ、この地域にあるべき意匠(デザイン)でいくべきだろうと思いました。


例えば極端に言うと、古い建築デザインだとしても、日本の古民家にヨーロッパの建築様式を混ぜたら、それはおかしいですよね。

同じように中山道和田宿に、京都の町屋特有の建築様式を取り入れるのも、ぱっと見は違和感ないかもしれないけど、それはそれでおかしいと思うわけです。

古民家を現代の間隔でリノベーションするとは言っても、中山道和田宿に存在する一つの建物として、明らかにおかしなものを作りたくない。

と言う事で、和田宿周辺の建物の格子の意匠を調べて回りました。

我ながら真面目だと思います。


結果としては・・・

真面目に語ってはみたものの、思いのほか格子の形状には統一性が無い事が分かりました。

作成した時期が異なるのか、これまで近隣を補修してきた大工さんが、それ程こだわりを持っていなかったのか。もしくはそもそも格子の意匠に地域文化というものが無いのか。それは正直分かりません。

結果として、従うべき意匠の指標が無いと判断しましたので、私的簡単かつ安く済む形で実現することにしました。


ちなみに私が格子に使ったのは45mmx15mmの胴縁材です。見た目だけ格子といった感じでしょうか。

本来、格子を作るなら、45mmx45mm等の角材を使うのが良いと思います。

角材を使う場合の利点としては、厚みがあるため、正面以外の角度から見たときの目隠し効果が高く、当然強度もそれだけ向上します。

厚みの無い胴縁では目隠し効果も強度も弱くなります。しかし、コストの事を考えて薄い胴縁材で見た目重視で済ませました。


試作、および設計図を作り、木材を切って塗料を塗って準備を進めていきました。

前置きがすごく長くてごめんなさい。

格子を作る様子をサクサクっとご紹介します。


おためしで作ってみた。こんな感じかな・・・

で、設計してみた。

腰板と格子を分ける梁?のようなモノとして古材の敷居材を使います。

敷居材はまっすぐで狂いが無く固く、こういう用途にはぴったりですね。

この敷居はおそらく桜か栗かと思います。

周辺の既存の古い柱も、古びた色で分かりにくいですがケヤキです。

表面1,2mmはボロボロなこの柱や、梁に使った敷居の古材にそのままネジを打ち込む事は絶対できません。

ケヤキにしても、栗にしても桜にしても、固い木材と言うのは下穴を開けずにネジを打ち込む事は出来ませんので注意が必要です。

杉とか松とかツーバイフォー材とか、柔らかい材木と向き合うDIYの世界ではちょっと味わえない苦労です。

固い木材にはインパクトドライバを使ってもネジを打ち込む事が出来ません。

打ち込めない場合がある、ではありません。

間違いなく打ち込めないのです。


本職の方であれば常識なのかもしれませんが、素人の私はリノベーションを進める中で結構痛い目を見ています。

ネジを打ち込む事も抜く事も出来ず・・・

折れたネジは数知れず。下穴キリも何本もダメにしています。


・・・ああ、また話が飛んでしまった。


進めましょう。

で、おためしで作った格子を、梁に置いてみた。

イメージはなんとなく湧いてきたような・・・


続いて北側に面した土壁が崩れかけている部分。ここの対処にも迷っていたのですが、正面に格子を設置する事を決めたので、この部分にも同じように格子を設置することにしました。


レーキ(熊手のような農作業道具)で壁を崩します。

ブルーシートで崩れた土壁を受けます。ちなみに土壁の残土は駐車場予定地に埋めます。

ステンレスのトイレの換気扇フードがありますが、これは新しく設置したものですから残します。

あとで設置した格子とうまいことくっつけます。

はい、すっきり。


さて、ここから格子作りですが、

木材カットと塗装を済ませていればあっという間の作業です。

はい、格子を作り終えました。(丁寧にやっても半日仕事。)

ステンレスの換気扇フードは黒く塗りました。


で、最後に下部に腰板を張って完成。

うむ。満足。

我ながらカッコよくできたと思います。

格子は作ってみると結構頑丈なもので、風などで破損する心配はなさそうです。


最後に、玄関の真横の部分の腰板は、この空間に入るために開閉できる戸として設置しました。

この空間は、トイレ用の配管、電気配線等があるので将来的にメンテナンス用に立ち入る必要がありますから、立ち入り出来ない形で囲ってしまうわけにはいかなかったため、ちょっと面倒ですが開閉可能な戸を付けました。

下の写真で黒い枠で囲まれた腰板部分ですね。蝶番を付けて開閉可能になっています。


作業を終えて見ると、意匠を考える事には時間をかけましたが、やってみたら結構簡単だったという印象でした。


格子の設置をご紹介しました。


あ、言い忘れましたが、リアルガチで格子を組む場合は、縦棒全てにほぞ穴をあけて横棒を通すとかやるのかもしれませんが、私は横棒を先に設置して、縦棒を裏側から横棒にビス止めするという方法で作成をしております。

たぶん見た目だけ格子のズルいやり方だと思います。

本職の方からの厳しいご指摘はご勘弁ください。


今回はここまで。


古民家カフェダイニング えんの家 長野県小県郡長和町 和田宿 旧中山道の古民家でランチ・カフェを!

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