着手してから時間がかかりましたが、やっと燻製小屋が完成しました。
お店で提供するベーコンなどを燻製する業務用の燻製小屋のため、いろいろ考えて作っていますので、ちょっとご紹介します。
お店のシンボルでもある門の下に作った小さな物置のような小屋が燻製小屋です。
以前は小さなドラム缶みたいなスモーカーでベーコンづくりをしていましたが、豚バラ5キロくらいをまとめて燻製するには少し手狭でした。
構造上の不満もあり、満足いくような本格的な機器を購入すると相当な金額になることなどから、当たり前のように自作することに。
幅90㎝、奥行60㎝、高さ180㎝(基礎を含め210cm)程のサイズ。およそ1㎥の空間です。
大量のベーコンはもちろん、将来的にソーセージや、サーモンなどを吊るして燻製したり、冬場に低い温度で冷燻をしたりすることを考えたら(実際やるかどうかは置いておいて)、このくらい容量があると頼りになりますね!
屋根は片流れ屋根。門の下だから雨をよける機能は必要ないのですが、空間を密閉するために箱状にしなくてはいけないので。
小屋の作り方自体は大した話ではないので、特に解説はしません。
DIY好きな人であれば、この程度の小屋は割とホイホイ作れるでしょうから。
今回は燻製小屋としてのポイントを書いていこうと思います。
・冬季の燻製でも十分な温度を確保できる断熱性が必要
ベーコン等を燻製する際には温度を常に65度キープが必要。
60度を下回ると雑菌が繁殖するリスクが高くなりますのでとても大切な点です。
冬季、外気温が0度であっても温度を確保できる断熱性能となると結構大変なスペック。
外壁と内壁の間、屋根部分も含め全面に30㎜厚の断熱フォームを入れてあります。
冬になってこれでも足りなかった場合、内面全体に遮熱シートを貼る可能性があります。
・風が吹きつけても温度が下がらずホコリが入らない気密性。でも煙の動きに気を遣う
ホコリ等が入るのは問題ですので、基本は密閉。
でもコーキングなどは行わず、壁、床、屋根のつなぎ目に巾木を入れる程度。しかもあまり神経質に密閉しすぎない構造にします。
密閉しすぎた場合に心配なのが煙の動きです。
煙が内部で流動し、粒子が食材にぶつかることで燻製になるわけですから、内部は空気の流れが起きる状態である必要があります。
本気で密閉した場合・・・
熱源は下部だから上昇気流が起こってくれそうだけど・・・対流は普通に起こるのか?
次々発生する燻煙ってどうなるの?煙の大渋滞で飽和状態とかになったりしない?
うーむ、正直あんまりよくわかりません。
密閉しない場合・・・
発生した煙と熱が、程よく上部から抜けていきます。
一般的な燻製器って意外隙間が空いてたりするものです。ガチの業務用は知らないけど、
密閉しない方式の方が経験がある。
未経験のチャレンジはやめておきましょう。
あと、あまり対流させて煙をまとわせるより、出来るだけ新鮮な煙で燻したいという、意味があるかないか分からないコダワリ。
いや、チップから上がったばかりの煙で燻すのと、何時間も漂った後の煙で燻されるのでは、なんか違う気がする。(実際は何も違わないかも)
まあ、ある程度自然に吸排気できる隙間があったほうが良いだろう。ということで、密閉しすぎない、方針で。そう、古民家の隙間風で換気の心配いらずと同じです。
・大きさに対して十分な熱源を用意する。もしくは熱源を考慮して大きさを決める。
燻製の熱源はいろいろ考えられます。精密な温度調整が不要なら炭火とかガス火もアリ。
ごく小さい燻製機ならスモークウッドの熱源だけでも足りるという話もありますね。
うちはお店で提供するベーコンなので、一定品質を確保するために精密な温度調整が必要。
よって自家製燻製の鉄板、サーモスタットと電気コンロのコンビでいきます。
温度の上がりすぎ、下がりすぎを防ぐためにサーモスタットで小屋内の電熱器の管理をするのはまあ、その通りなのですが・・・
それなりの容積の空間の温度をこれだけの温度に持っていくだけで相当熱量が必要です。
ご家庭のオーブンの小さな空間だって、予熱するには結構時間がかかるものです。
ご家庭のオーブンは各辺30㎝くらいでしょうか。計算すると0.027㎥として
それに対してうちの燻製小屋は約1㎥、ざっと36倍の容積があります!!
この大きさの空間を70度に予熱するのは、それはそれはたいへんな熱が必要なのです。
まあ、計算すれば電気式ヒーターなら何ワットで何分でこの空間を70度にできるか。
みたいな推測はできる。
・・・が、意外と計算が面倒だったのでフィーリングで行く事に。(いきなり雑)
ま、1200Wの電気コンロ(600Wの電気コンロx2台)くらいでいけるだろ。
根拠も計画性もない対応ではありますが、そもそも確保している1500Wのコンセントの範囲内でしか対応はできません。
もし1200Wで足りなければ300Wヒーターを追加して1500Wまで加熱機器を入れる。
1500Wでも足りなければ木炭でも入れて加熱を助けようかなと。そういう計画で。
さて、1200W分の電熱器スイッチオン!外気温は20度。
・・・1時間後
40度。
えー・・・まじかー
1200Wでは1時間かけて20度しか温度を上げられない。。
ジワリジワリ上がってはいる。でもこの調子では目標の65度に到達するまでにあと1時間半くらいかかるのかな。
じわりじわりとはいえ、温度を上げる力はあるということですから、一旦高温にすれば維持する能力はあるだろうと判断しました。
しかし、そんなに長く待たなくて良いよう、速やかに温度を上げる方法を考えたいですね。
そこで登場カセットガスコンロ!
こいつで小屋の温度を一気に目標まで上げて、取り出して、後は電気で温度維持という作戦です。
70度の室内にカセットガスを放置するのは危険ですから、温度を上げる目的を達したら速やかに取り出すのが必須です。
ということで、カセットガスコンロを設置、点火!
わーい!どんどん温度が上がる!やったね!
で、60度を超えたので、そろそろカセットガスコンロを取り出そうかと思ったところ、おや?
温度上昇が勝手に止まった。むしろ下がっていく??
なんで!!??
開けてみると・・・コンロの火が消えてる!?
!あやべえ!酸欠だ!!
酸欠を理解するまで1秒程度。はっと息をのんだ時、小屋の中の空気を一呼吸してしまいました。これは大変危険です。
あまりに酸素が低い空気を吸い込むと一発アウトという話もあります。大事にならなくて良かった・・・
ヒヤリハット事案です。
まあ、そういうことです。
密閉度が高いので、酸素が足りなくなって火が消えてしまったのです。
温度を上げるためにコンロを使うときは、あえて下の段の扉を開けておくことにしましょう。取り出しも素早くできますしね。
さらにもう一つ罠がありました。
カセットガスコンロで一度所定の65度まで上昇させたのち、カセットガスコンロを取り出し、あとは電気コンロにお任せ・・・と思ったら・・・!?
みるみるうちに温度が下がっていくのです。あっという間に40度くらいまで・・・
結構密閉してるはずなのになんで!?
理由もわからず、しばらく電源を入れたまま放置したところ、30分後くらいに65度近くまで上昇していることが確認できました。
おそらく壁、柱、天井、床の木材が熱を吸収してしまうんですね。空気が所定の温度になって過熱を止めると、内装材に熱が吸われて空気の温度が下がる。内装材までが65度になって、初めて温度が安定するというわけです。これは最初気づかなかった。
燻製小屋内の空気を上げるなら余裕と思っていましたが、燻製小屋の建材までも温める熱量が必要だったのです。
熱量の問題もそうですが、空気はすぐ温まるけど木材は温まるまでに時間がかかります。
温度が安定するまでに時間がかかるのは正直欠点かなと思います。
この規模の燻製小屋をお考えの方はご注意ください。
ただ、一度上がり切ってしまうと、建材が温まっている効果もあり、多少開閉して空気の温度が下がったとしても、すぐに温度が下がらないのは良いところです。
まあ、そんなこんな試行錯誤しながらひとまず完成ということになりました。
試運転で作った燻製卵はそれはそれは美味しくできましたので、
お次は本番のベーコンの燻製です。結果はインスタで近いうちに。
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